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朝、営業担当者が顧客から届いた問い合わせを開く。AIが過去の対応履歴や製品情報を調べ、回答案を作る。担当者は内容を確認して送信し、必要なら次の対応を決める。AIの導入で仕事を変えるとは、こうした一つの業務の流れを見直すことから始まる。
Boston Consulting Group(BCG)の「2026 Applied AI Index」によると、20以上の業界から1300人以上の経営層や上級リーダーを対象にした調査で、企業の50%がすでにAIから価値を生み出している。実験段階から本番運用へ移りつつある企業も増えているという。
ただし、AIツールを配れば成果が出るわけではない。調査が示す先行企業の特徴は、投資先を絞り、業務プロセスを組み替え、成果を測りながら全社へ広げていることだ。導入済みのツールの数より、仕事のどこをどう変えたかが差を生んでいる。
「価値を創出」と「全社で活用」は別の段階#
調査対象のうち、AIの成熟度が最も高い「Future-Built」企業は7.5%だった。一方、41%はAIの展開を拡大し、価値を見いだしている。AIで何らかの成果を得る企業が半数に達していても、全社的に活用できている企業はまだ限られる。
Future-Built企業の過半数にあたる61%は、試験的な取り組みから複数年にわたる全社プログラムへ移行していた。BCGの調査では、こうした先行企業はAI導入で遅れている企業と比べ、売上成長が2.4倍だったとされる。
この数字は、AIを入れれば売上が自動的に伸びるという意味ではない。先行企業は、経営上の優先課題に沿って取り組みを選び、責任者や事業価値の測定基準を定めている。個別チームの試行で終わらせず、成果が見えた仕事を複数の部門へ広げている点が重要だ。
調査では、Future-Built企業と展開を拡大している企業は、遅れている企業に比べ、コスト削減と収益成長の両面でAIから2~3倍の価値を生み出していた。差は業種だけでは説明できない。調査対象の20業種すべてにFuture-Built企業が存在していたからだ。
ツールを入れる前に、業務の流れを見直す#
Future-Built企業は、AIから得る価値の70%が、既存プロセスの再設計や新しいプロセスの創出から生まれると見込んでいる。AIの回答精度を上げるだけでなく、誰がどの情報を受け取り、どの判断をし、次に何をするかまで見直すということだ。
たとえば問い合わせ対応なら、回答案の作成だけをAIに任せる方法がある。そこから一歩進めると、問い合わせの分類、参照すべき社内情報の提示、担当者への振り分け、対応後の記録までを一連の流れとして組み直せる。人が判断する箇所と、AIが処理できる箇所を分ければ、導入後にどこで時間や品質が変わったかも追いやすい。
最初から全社一斉に変える必要はない。まず、業務上の負担が大きく、成果を数字で確認しやすい仕事を選ぶ。処理時間、やり直しの割合、問い合わせの解決率など、取り組み前の状態を記録しておけば、導入後に効果を比べられる。成果が出なければ、AIのモデルだけでなく、業務の手順や使うデータも見直す。
まずは少数の用途に投資を集中する#
BCGの調査では、AIが生む価値の54~78%が中核的な業務機能に集まっていた。テクノロジー/ITと研究開発は、すべての業種でAI価値の1位または2位の推進要因となり、マーケティング、営業、顧客サービスでも測定可能な価値が確認された。
幅広い部署に少しずつ導入するより、重要な業務をいくつか選んで深く取り組むほうが、成果を確かめやすい。進め方は次のように整理できる。
- 事業目標に結びつく業務を選ぶ。コストを下げたいのか、対応を速めたいのか、売上機会を増やしたいのかを先に決める。
- 現状を測る。作業時間や処理件数、修正の頻度など、導入前の基準を残す。
- 小さく試し、業務全体を確認する。AIの出力だけでなく、人の確認にかかる時間や例外対応も記録する。
- 成果が見えた用途を、共通のルールや基盤とともに他のチームへ広げる。
実施する用途は、話題性ではなく自社の優先課題から選びたい。全社の各部署が別々に似た実験を続けると、データの扱いや安全性のルールがばらつき、成果を比較するのも難しくなる。まず優先領域を絞り、責任者と評価基準をそろえることが、次の展開につながる。
エージェントの導入には、データと責任体制が要る#
AIエージェントが業務を自律的に進める場面も増えると見込まれている。調査では、企業の約42%が2030年までにエージェントが自律的に行動すると予測していた。AIが生む価値に占めるエージェント型AIの割合は、2025年の17%から2026年には22%へ上昇し、BCGは2030年に39%になると予測している。
一方で、エージェントに仕事を任せるほど、参照するデータの品質や、操作できる範囲の管理が大切になる。誤った情報に基づく処理や、想定外の操作を防ぐには、使ってよいデータと権限を定め、結果を人が確認する条件も決めておく必要がある。
Future-Built企業の95%はデータ変革を進めており、66%以上が全社的なAIプラットフォームの構築に取り組んでいた。ここでいう基盤は、単一ベンダーの製品をそろえることに限らない。共通のアーキテクチャーと制御の仕組みを整え、各部門のAI利用を管理しやすくする考え方だ。
人材や役割の設計も合わせて考えたい。Future-Built企業の55%は、人間と自律型AIエージェントが共に働く体制を計画していた。調査では、AIが既存の仕事を代替すると予想する企業が11%にとどまる一方、89%は新たな仕事を生み出すと期待していた。これは予測や期待であり、実際にどんな職務が増減するかは企業や業務によって異なる。導入する現場の担当者を早い段階から巻き込み、判断や例外処理の責任を明確にすることが欠かせない。
明日、ひとつの業務から始める#
停滞している企業の割合は、調査によると2025年の14%から2026年には4.5%へ下がった。AIを試すだけの段階から、複数の事業部門で価値を得る段階へ進む企業が増えている。とはいえ、自社にも同じ成果が出るとは限らない。業務やデータの状態を確かめ、結果を測る必要がある。
まずは、現場で時間がかかっている業務をひとつ選び、今の処理時間と課題を書き出してみよう。次に、AIに任せる作業、人が判断する作業、導入後に見る数字を決める。小さく試した結果を確かめてから、続けるか、手順を変えるか、別の部門へ広げるかを判断すればいい。
出典: https://japan.zdnet.com/article/35253550/
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