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給与計算の金額が、実行するたびに少しずつ変わる。そんな業務アプリは使えない。AIの予測が90%当たっていても、外れる10%が給与や決算に現れるなら、企業は安心して任せられないからだ。
Workday共同創業者のAneel Bhusri氏は、米ラスベガスで開かれた年次カンファレンス「Workday Rising 2026」の基調講演で、この問題を「確率論的なAI」と「決定論的な業務アプリ」の違いとして説明した。そして、AIの推論力を企業のルールや権限に沿わせる「lawful AI」を、新しいWorkdayの軸に据えた。
Bhusri氏がCEOに戻った理由#
Bhusri氏は2005年にWorkdayを共同創業し、2024年1月にCEOをCarl Eschenbach氏へ引き継いだ。その後、2026年2月に再びCEOに就任した。今回の講演では、AIの登場によって始まった新しい技術の時代に、Workdayが製品を届ける機会があると語った。
一方で、AIへの対応が遅れれば、事業にとって脅威にもなるという。製品づくりに関わってきた立場から、変化を傍観できなかったと説明した。
同社は技術だけでなく、組織づくりや顧客との関係も見直してきた。2025年に買収したAIスタートアップSanaの創業者兼CEO、Joel Hellermark氏を、Workdayの最高AI責任者(CAIO)に任命したのもその一例だ。
AIに「決定論的なレール」を敷く#
AIは入力や状況に応じて確率的に答えを出す。業務アプリは、決められたルールに従って毎回同じ結果を返す。Bhusri氏はこの違いを踏まえ、給与計算や四半期決算の締めを確率に任せることはできないと強調した。ミスが許されない仕事でAIが価値を出すには、まず信頼されなければならない。
Workdayが示す解決策は、決定論的なアプリの上にAIを組み合わせることだ。アプリがルールや承認、アクセス権限を管理し、AIが推論や予測を担う。これにより、AIは質問への回答や提案にとどまらず、統制の範囲内で仕事を実行できるという。
その土台としてBhusri氏が挙げたのが、Workdayのデータと業務コンテキストだ。同社によると、約8,000万人の従業員データを共通のデータモデルで扱い、2025年には約1兆4,000億件のトランザクションを単一のプラットフォームで処理した。
Workdayは2013年からデータと機械学習に取り組み、2020年には大規模言語モデル(LLM)も自社開発していたと説明する。経費の承認者や適用するポリシー、業務の流れ、セキュリティ権限といった情報も、業務システムの中にある。こうした仕組みを、同社はAIのための「決定論的なレール」と呼ぶ。AIが何を実行できるのか、誰の承認が必要なのかを定めるものだ。
17種類の自社エージェントと4つの利用経路#
Bhusri氏によれば、Workdayでは人事、財務、IT向けに17種類の「lawful」なエージェントが稼働している。CEO復帰時には約50種類を開発していたものの、重要なものに絞ったという。
AIの導入方法は企業によって異なる。そこでWorkdayは、同じプラットフォーム上に4つの経路を用意した。
- Workdayが開発したエージェントを使う。
- 他社のフロントエンドからWorkdayの機能を利用できる「AI API」を使う。
- 「Extend AI」(旧Extend Pro)で独自のエージェントを作る。
- 「Data Cloud」でWorkdayと他システムのデータをつなぐ。
自社製以外のエージェントも、「agent system of record」に集約し、まとめて管理・統制する構想だ。Workdayのセキュリティや業務プロセスの枠組みを、複数の利用経路に広げようとしている。
ただし、これらの発表だけで、個々の企業の業務にどこまで適用できるかは分からない。実際に導入するなら、対象業務や承認条件、誤動作時の扱いを確認し、必要な権限だけを与える設計が欠かせない。
Sanaを標準ホーム画面に#
基調講演では、Workdayの標準ホーム画面をAIの「Sana」に切り替えることも発表された。利用者の入り口をAIに寄せることで、仕事の依頼や情報へのアクセスを変える狙いが見える。Sanaの買収と経営陣への登用を含め、WorkdayはAIを既存製品の機能として加えるだけでなく、製品の使い方そのものに組み込もうとしている。
Bhusri氏は、AIは人を置き換えるのではなく、人の能力を広げるものだと述べた。仕事の役割が変わることを受け止め、企業が責任を持って対応すべきだという。会場に集まった約3万人のユーザーには、日常の雑務を減らし、意思決定や事業の前進に時間を使ってほしいと呼びかけた。
導入前に、自社の「レール」を確かめる#
「lawful AI」という考え方の要点は、AIに業務を任せる前に、業務のルールをシステム上で扱える状態にしておくことだ。承認者やポリシーが曖昧なままでは、AIの実行範囲も曖昧になる。エージェントの種類を増やすより、何を任せ、どこで人の確認を挟むのかを決めることが先になる。
Workdayの発表を自社に当てはめるなら、まず経費精算や社内問い合わせなど、対象を絞った業務を一つ選ぶ。次に、使うデータ、適用するルール、必要な承認者を洗い出す。そのうえで、AIに任せる操作と人が確認する操作を分け、試行後に処理の正確さや確認にかかる時間を見直す。
AIを導入するかどうかだけでなく、どの仕事をどんなルールのもとで任せるのか。自社の業務を一つ選び、承認フローと権限から確認してみよう。
出典: https://japan.zdnet.com/article/35253538/
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