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財務チームがクラウドの請求書を見て、複数年先のコストを試算する。ワークロードが増えれば料金も増える。その伸び方が、事業の成長を大きく上回っていたら、契約更新を前に「このまま使い続けるのか」という話が出てくる。

クラウドから自社運用へ戻る企業はある。ただし、請求額が高いからといって、すべてのシステムを移せば得をするわけではない。判断の分かれ目は、使い方をどれだけ予測できるか、そして料金の中に削れる無駄がどれほどあるかだ。

数百万ドルのクラウド費用を見直した37signals#

「HEY」や「Basecamp」を提供する37signalsは、2006年にAmazon S3の登場を受けてパブリッククラウドへ移行した。その後、クラウド利用のピーク時には年間数百万ドル規模の費用が発生。2022年にAWS上のワークロードを縮小し始め、2023年までにAWSとGoogle Cloudから自社所有のハードウェアへ移した。

同社が説明する移行費用は、ハードウェアの導入にかかった50万ドル。一方で、年間350万ドルを超えるクラウド費用を解消したという。自前のデータセンターを建てず、コロケーション施設にサーバーを置いたのもポイントだ。運用にはKVM、Docker、Kamalなどを使っている。

もちろん、この数字をそのまま自社に当てはめることはできない。必要なサーバーの規模も、移行にかかる人件費も企業ごとに違う。大事なのは、クラウドの月額だけでなく、ハードウェアの購入、保守、運用体制を含めて比べることだ。

ほかにも、クラウド費用の上昇を問題にする企業がある。米自動車保険会社GEICOでは、Azureを含むパブリッククラウドへの移行を進めた10年間で、クラウド利用料が2.5倍になったと、インフラストラクチャー担当バイスプレジデントのRebecca Weekly氏が説明している。

一方、SEOソフトウェア企業のAhrefsは、AWSのようなパブリッククラウドを使ったことがないとし、2020年以降に4億ドル以上を節約できたと試算している。これは同社自身による試算で、他社でも同じ結果になるとは限らない。

請求書の金額だけでは理由が見えない#

クラウド移行を見直すきっかけは、単発の高額請求とは限らない。Cockroach LabsのCEO兼共同創業者、Spencer Kimball氏によると、多いのは契約更新のタイミングだ。財務チームが複数年の利用料を予測したときに、ワークロードの拡大より料金の伸びが大きいと分かるケースがあるという。

Cast AIが2025年に2,100の組織を調査したところ、AWS、Google Cloud、Azure上のKubernetesクラスターで、割り当てられたCPUリソースの平均使用率は10%、メモリーは23%だった。調査対象の構成で未使用の余力が大きかったことが分かる。ただし、すべての企業が同じ割合で余らせているという意味ではない。

使っていないサーバーの割り当てを解除するだけで費用を下げられる場合もある。Unravel DataのCEO、Kunal Agarwal氏は、利用状況と請求のずれを調べると、クラウド移行の議論が不要になることもあると話している。移行には準備やリスクが伴う。まず無駄なリソースを整理すれば、移行せずに同程度の削減を実現できる可能性がある。

見落としやすい費用は、サーバー料金だけではない。クラウドからデータを外へ出すエグレス料金、リージョン間の転送料金、使い方に見合わないプラットフォームのライセンス料なども確認したい。英国の競争・市場庁(CMA)は、別のクラウドプロバイダーへ移ろうとする企業がコスト上の障壁に直面しているとして、Microsoftの調査を進めている。

予測しやすい処理ほど自社運用を検討しやすい#

オンプレミス回帰が候補になるかを見極める軸のひとつは、ワークロードの需要を予測できるかどうかだ。Kimball氏は、1年先まで需要を見通し、高い稼働率で運用できるなら、自社でインフラを持つほうが安くなる場合があると指摘する。

反対に、利用量が急に増減する処理や、事業の成長に合わせてすぐ拡張したいシステムでは、パブリッククラウドの柔軟さが助けになる。だから企業全体の環境を一度に切り替えるより、ワークロードごとに向き不向きを調べるのが現実的だ。

Platform9では、2025年12月にクラウドリソース費用が急増したことを受け、ワークロードの約40%をオンプレミス環境へ移したという。同社によれば、開発、テスト、ラボの環境は、オンプレミス運用で費用を70%抑えられた。これはPlatform9のケースであり、他社でも同じ削減率になるとは限らない。SLAの重要性が比較的低い環境は、移行候補を探す出発点になりそうだ。

移行の前に、まず数字をそろえる#

オンプレミスに戻すべきか判断するなら、次の順に調べると話が進めやすい。

  • 直近12か月の請求を、コンピュート、ストレージ、データ転送、ライセンスに分ける。
  • CPUとメモリーの実使用量を確認し、割り当てたまま使っていないリソースを整理する。
  • 需要の変動、SLA、データの置き場所に関する要件を、ワークロードごとに記録する。
  • クラウド利用を続ける場合と自社運用する場合を、3〜5年の総費用で比べる。機器代に加え、保守、電力、ネットワーク、担当者の人件費も含める。
  • 移行するなら、まず開発・テスト環境など対象を絞り、運用の手間や実際の費用を測ってから範囲を広げる。

費用を比べるときは、クラウドの現在の請求額をそのまま将来分として使わないほうがいい。先に未使用リソースを削った後の費用を基準にすれば、最適化だけで足りるのか、移行が必要なのかを比べやすくなる。

クラウドかオンプレか、二択で考えない#

Andreessen Horowitzが2021年に発表したレポートは、上場ソフトウェア企業主要50社のクラウド費用を分析し、約1,000億ドル相当の市場価値がクラウドコストによって失われていたと試算した。さらに上場ソフトウェア市場全体に当てはめ、同じ処理をオンプレミスで動かす場合と比べて、少なくとも5,000億ドルの無駄があると推定している。これはレポートによる推計で、個別企業の削減額を示す数字ではない。

クラウドは、デジタルトランスフォーメーションを始めるときの有力な選択肢だ。一方で、利用量が安定した処理や、高い稼働率を保てるシステムでは、自社運用の費用が有利になることもある。大切なのは、クラウドかオンプレミスかを一括で決めず、実際の請求と利用状況から、処理ごとに判断すること。

次の契約更新までに、まず直近12か月の請求とCPU・メモリー使用率を並べてみよう。使っていないリソースが見えたら整理し、それでも費用が合わないワークロードだけ、移行費用を含めて比較してほしい。

出典: https://japan.zdnet.com/article/35253356/

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